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<アフターコロナのミライを描く>(3)持続可能のスピリッツ まちの片隅にジン蒸留所:東京新聞 TOKYO Web

蒸留器を前に「廃棄予定の食材に価値を見いだしたい」と語る山本祐也さん=台東区で

蒸留器を前に「廃棄予定の食材に価値を見いだしたい」と語る山本祐也さん=台東区で

 素材選びが自由。だから香りのレパートリーは無限大。ジンブームに多様性の時代を予感した。

 スパイシーかと思ったらすぐに果実のような爽やかな香りが追いかけてきた。

 隅田川近く、台東区蔵前の「東京リバーサイド蒸溜所」。かつて印刷工場だった建物を活用し、二〇二一年からジン製造の拠点としている。看板商品の「LAST EPISODE0−ELEGANT−(ラストエピソードゼロ エレガント)」は、日本酒造りの副産物として出る酒かすが原料。十種類の素材を組み合わせ、華やかな香りを実現した。

 穀物が原料の蒸留酒に、植物などの「ボタニカル(香料)」で香りを添えたのがジン。材料に細かな制約はなく、造り手の個性が反映させやすい。都内をはじめ各地で小規模な蒸留所の開設が相次ぐほか、大手酒造会社もジンの製造に力を入れる。日本洋酒酒造組合によると、加盟社が製造したジンの二〇年の国内出荷量は前年より五割増え、五年前の二倍近くに上った。

エシカル・スピリッツが運営する東京リバーサイド蒸溜所。1階にクラフトジンを買えるショップ、2階にバーがある(同社提供)

エシカル・スピリッツが運営する東京リバーサイド蒸溜所。1階にクラフトジンを買えるショップ、2階にバーがある(同社提供)

 東京リバーサイド蒸溜所の運営会社「エシカル・スピリッツ」代表の山本祐也さん(36)が、酒かすからジンを造ろうと思ったのは一八年、英国の大学院に入学したときのことだ。

 経営していた日本酒の販売会社の仕事で全国の酒蔵を巡る中、大量に出る酒かすのほとんどが廃棄されている実態を見ていた。ワインやビールと違い、原料を問わないジンの人気を本場の英国で実感。「酒かすを活用できる」と思った。取引先の酒造会社のスタッフに声をかけ、一九年にジン開発をスタートした。

 ジン造りは大きく分けてベーススピリッツの製造、香り付けの二つの工程がある。一般的なジンは、香り付けの前の段階では無味無臭に近いが、酒かすから造ったジンは日本酒の香りが残っていた。素材選びは簡単ではなかったが、山本さんは「成功すれば、誰もまねできない商品になる」とあきらめなかった。

 年が明け、ショウガなど六種類のボタニカルで香り付けしたジンが完成した。伊勢丹新宿本店で販売すると評判になった。ミシュランガイドの三つ星レストランが扱ってくれ、世界的に権威のある品評会で最高金賞も受賞した。

酒かすやカカオの皮など。さまざまな材料から造ったジン

酒かすやカカオの皮など。さまざまな材料から造ったジン

 コロナ下、飲食店の休業やアルコール提供の自粛でビールが余ったとき。各地の蒸留所が、賞味期限が迫り廃棄寸前となったビールを蒸留して、ジンに生まれ変わらせるプロジェクトにチャレンジした。山本さんも米国大手のビール約二万リットルを引き取り、四千五百本のジンを造った。廃棄されるカカオの皮やコーヒーの出し殻を利用したジンも造った。

 生活のあらゆる場面が変化を迫られたコロナ禍で「ユニークな付加価値がある消費が伸びた」と山本さんは言う。廃棄予定の素材に価値を見いだすジン造りは持続可能な酒造り。「ジンの持つバックストーリーに思いをはせながら、奥深い味わいを楽しんでほしい」と呼び掛ける。(西川正志)



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