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【連載】中山淳雄の「推しもオタクもグローバル」 ニューヨークのアニメの祭典Anime NYC is NOW#3 熱狂的な支持を集めるVTuberグループ「ホロライブEnglish」 | gamebiz

会場から溢れるVTuberラバーのニューヨーカー達
VTuberグループ「ホロライブプロダクション」を展開するカバー社とNY州日本国領事館とのコラボが、アニメNYCで実現したという記事に、VTuber界隈は大いに盛り上がった。「止まらないホロライブ」「まさかの政府案件」「これがクールジャパン」などのコメントが 殺到し、大喜利のように様々なポストが日本からも飛び交った。アニメNYC開始後の1発目のパネルとなる“hololive English -Council- Anime NYC Special Panel”は、2300席にもなるメイン会場をおさえ、数時間前から長蛇の列ができるほどの人気だった。

新たに今年8月にデビューしたばかりの5人のVTuberグループ(ホロライブ English -council-)のお披露目会ともいえるイベントで、米国東海岸時間15時にホロライブEnglishのメンバー達が同時にニューヨークに集うイベントが会場で実施される。日本テレビの放送取材も入り、超満員の会場の中30分遅れで開始したそのイベントは、開始してもまだパネルルームの外には入り切れない列が立ち並び、また(第2回目記事でも伝えたように)3時間待ってもパネルルームはおろかJavits Center会場そのものにすら入れないファンたちは「hololiveをどうやって観ればいいんだ!?」「中の様子を送ってくれ!」といった阿鼻叫喚のポストがTwitterにいくつもこだましていた。

  


▲パネル会場で開始を待つファンたち

政府とVTuberプロダクション運営会社という奇跡のコラボを実現した山野内総領事も、満面の笑みでホロライブEnglishブースで撮影を行い、今年のアニメNYCの目玉といわんばかりの盛り上がりを呈していた。

▲ホロライブEnglishブースでぴったりと写真撮影におさまる(左から)山野内総領事、NY州議会議員Ben Kallos氏、アニメNYC創業者Peter Tatara氏。手前が世界最高登録者数を誇るGawr Gura。

ホロライブEnglishは2020年9月に立ち上がったMythの5人組から始まる。Mori Colliope(森カリオペ)、Takanashi Kiara(小鳥遊キアラ)、Ninomae Ina’nis(一伊那尓栖)、Watson Amelia(ワトソン・アメリア)などから構成されるが、最も有名なのがGawr Gura(がうる・ぐら)だろう。現在YouTubeの登録者数は358万人で、2020年度のネット流行語100にも選出され、日本も含めた業界の最先端を走っているサメをモチーフにした女性VTuberだ。毎週数本は出る新作動画は、最低でも30万から、だいたい50-60万の視聴がついている。英語でしか配信をしていないため、ほぼほぼ日本ではなく欧米圏を中心とした海外ユーザーといえるだろう。

 

▲ホロライブEnglishのメンバー達。全員が登録者数十万~数百万をかかえるトップタレントである。

日本でのVTuberのパイオニアはキズナアイだが、2016年末の活動開始から約1年で100万に到達した当時に比べると、Guraが20年9月生誕から2か月で100万人突破。その後1年もたたずに21年7月キズナアイの記録296万人を抜き去って世界一の記録を塗り替えたことなどを見るに、この1年はコロナによるロックダウンがプラスに転化して明確にVTuber界隈が盛り上がってきたことがわかる。日本国内のVTuberがすでに13000人(2020年末)と過密状態となっており、もはや日本を発信源としてVTuber業界の主軸はすでに世界戦に入っていることが分かる。

米国でもVShojoという「ホロライブプロダクション」に追随したサービスが約1年ほど前から立ち上がっており、当のキズナアイもまたハリウッド大手のユナイテッド・タレント・エージェンシー(UTA)とのパートナーシップ契約によって北米展開を試みている。言語という高いハードルはありながら、また投げ銭という“アジア的な”文化としてあまり欧米市場が射程に入っていなかったこのVTuber達も、もろ手を挙げて迎え入れられるムードのなかでなんとか海外展開をと試み始めているのがまさに今の2021年と言えるだろう。

日本のサイバー文楽が世界を席巻する
VTuberの運営会社は競争が激しくなってきている。「ホロライブプロダクション」を運営するカバー社と業界を二分するのが、「にじさんじ」を運営する“ANYCOLOR社である。ソニーグループの出資を受け、Bilibiliと提携した中国展開など世界展開に積極的である。

VTuber運営事務所の仕事は、さながら芸能事務所である。デジタルとはいえ、キャラクターの背景にはタレントがおり、そのタレントのキャラクター性とイラストを表裏一体としながら、常に“劇場”となるYouTubeの最前線でユーザーのコメントを一身に浴びてその芸の良し悪しをブラッシュアップし続けている。YouTuberが1人タレントを前面に出す「落語」とすれば、VTuberは「人形浄瑠璃(文楽)」のようなもの。アバターとなるキャラクターの背景にはしっかりとそれを手づかみするタレントが存在し、そのタレントの属人性とマネジメントと企画の組織力でYouTubeというウィンドウから全世界のユーザーを掴みにいくダイナミックな事業である。ちなみにゲーム配信や歌唱がコンテンツとして多いのは、最もそのタレントの個性が喜怒哀楽として表現しやすいからだろう。

▲コスプレMeetupでは「ホロライブプロダクション」のコスプレーヤーたちが一堂に会した

「ホロライブプロダクション」にとってアニメNYCは完全に初めてのフィジカルで開催される海外イベントというわけではない。この1年の間でもカナダ、ダラス、オーランド、ボストン、ドイツなどでのイベント展開もなされ、都度イベントパネルでは数百人サイズの会場を満杯にしてきた。現在の視聴者としては米国が中心ではあるが、カナダや欧州ではドイツでのアニメイベントDoKomiでも多くの歓声を集め、手ごたえを感じ始めている。そうした中で今回のニューヨークで2000名を優にあふれるファンを集めることに成功したのは、今後も海外イベント展開に積極的になるのに十分なきっかけとなったと言えるだろう。

イベント事業はこの1年半は苦境の極みにあった。20年3月はアニメジャパン(15万人規模)の開催中止にはじまり、5月のニコニコ超会議(17万人規模)、8月コミックマーケット(延べ70万人以上)、9月の東京ゲームショウ(25万人規模)などが中止となりながら、なんとかオンラインへの移行を図った。しかしながら「オンラインでは盛り上がらない・バズらない・跳ねない」というのは業界的には常識になりつつある。世界的なイベントであるAnime Expoやコミコンであっても、オンライン開催となると本来そのブランドが包含していた、これらの多くのコスプレーヤーや、彼らとタレントの交錯で生まれるような“事件”的な盛り上がりを生み出すことが難しかった。やはりリアルの力は何にも代えがたい―そうした背景もあって、今回の2021年11月のアニメNYCは世界のアニメイベント事業者にとって新しい世界線をみせてくれた記念すべきイベントだったと言えるだろう。

 

■中山淳雄氏略歴
エンタメ社会学者&早稲田MBA経営学講師。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイト、バンダイナムコスタジオ、ブシロードを経てRe entertainmentを創業。エンタメ社会学者として研究する傍ら、メディアミックスIPプロジェクトのプロデュース・コンサルティングに従事している。東大社会学修士、McGill大経営学修士。新著『推しエコノミー 「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』を10月14日に上梓し、アマゾンベストセラー1位を記録し、早くも増刷も決定した。

 

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