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Opinion:ブロックチェーンゲームに大打撃を与えるValveの禁止令 – GamesIndustry.biz Japan Edition

SteamがNFTやブロックチェーンベースのゲームを禁止したことで,ブロックチェーン革命はこれからどこで起こることになるのだろうか。

 先週,ValveはSteamのルールを更新して(関連英文記事),暗号資産やNFTを発行したり,ユーザーに交換させたりするブロックチェーンをベースにしたゲームを禁止した。

 これまで,Steam上で起こることには「何でもあり」のアプローチを取ってきた企業としては,異例の積極的な動きだった。同社は,予測可能な問題を指摘されたり(関連英文記事),大声で十分に怒鳴られたりした場合にのみ(関連英文記事),方針を転換していたのだから。

 ブロックチェーン技術の欠点を見極め,ゲームでの使用にはなんの説得力もなく,環境を破壊する投機的なバブルに貢献することを拒否した(これは我々がブロックチェーン関連企業の報道を制限する理由として述べているものだ:関連英文記事)Valveの姿勢を我々は評価したいと思うのだが,残念ながら,それはValveの理由とは何の関係もないようだった。

 ValveはNFTやブロックチェーンのゲームを禁止する理由をまだ説明していないのだが,そのようなゲームを開発しているデベロッパからはいくつかの示唆が届いている。

 「Steamの見解は,アイテムには価値があるというもので,現実の価値を持ちうるアイテムを自分たちのプラットフォームでは許可していないのです」とAge of Rustの開発元であるSpacePirate Gamesは,先週,ブロックチェーン禁止のニュースを広めた際に,自身のTwitterアカウントでこのように語っている(参考URL)。

 仮想アイテムが「現実世界の価値」を持つという考え方は,何年も前から論争の的になっている。米国政府は15年ほど前に(参考URL),Second LifeやWorld of Warcraftなどのゲームでの仮想商品の交換に対する課税を検討し始めた。ドイツの税務裁判所は最近,暗号資産を使って仮想の建物を借りると実際に税金がかかるという判決を下した(参考URL)。

仮想アイテムには現実の価値がないという主張は,”LootBoxは賭博だ “という非難に対する業界の防御策として重要な役割を果たしていた

 課税だけでなく,仮想アイテムには実世界での価値がないという主張は,「LootBoxは賭博だ」という非難に対する業界の防衛策として重要な役割を果たしていた。米連邦取引委員会(Federal Trade Commission)がLootBoxを調査した際(関連記事),ESAはバーチャルアイテムには実世界での価値がないと主張した。この調査では,ほとんど何も問題が起こらなかったので,どうやら効果があったようだ。

 EAは,FIFA Ultimate Teamを擁護するためにオランダ賭博局の前で同じ主張をしたのだが,こちらはあまりうまくいかなかった(関連英文記事)。

 また,この議論に少し近いところでは,2018年にBig Fish Gamesが,ソーシャルカジノゲームBig Fish Casinoをめぐって,Valveの本拠地でもあるワシントン州で訴えられた際に,仮想アイテムには現実世界での価値がないと主張した。この法律では,違法な賭博行為によって価値のあるものを失った人は,その損失を回復するために訴訟を起こすことができ,その訴訟がBig Fishに対する控訴裁判所の評決と(関連英文記事),同社に1億5500万ドルの損害を与えた2つの集団訴訟による和解につながったのだ(関連英文記事)。

 ゲーム業界では,アプリ内課金でバケツ一杯の宝石を100ドルで売りつけることはあっても,仮想商品には現実世界での価値がないことを明確にしている。 それでも,批評家や立法者からは何度も非難されていた。NFTの中心的なコンセプトを考えると,これらのブロックチェーンゲームのデベロッパが現実の価値がないと主張することは非常に難しいだろう。

 また,さまざまな種類のブロックチェーン技術が政府によって規制される可能性も十分にある。中国はすでに暗号資産の採掘を禁止し(参考URL),デジタル通貨の取引を停止しており,米国証券取引委員会は暗号金融の規制強化を約束している(参考URL)。

 これらはいずれも,SteamがブロックチェーンやNFTベースのゲームをホストすることを法的に妨げるものではない。しかし,規制や法的な意味合いについては未解決の問題が多く,この問題全体が頭痛の種になっているかのようだ。

 そこで問題となるのは,ブロックチェーン技術がもたらす頭痛の種や,政府や規制当局の介入による未知の頭痛の種が追加される可能性があるにもかかわらず,なんでValveがブロックチェーン技術に投資たがると思うのか,ということだ。なんで大規模なプラットフォームホルダーがそうするだろうか? なぜわざわざ,コントロールできない分散型商品の経済を取り込み,サポートし,利益を得られない取引を可能にし,Valveに適した業界標準のビジネスモデルを破壊しようとするのだろうか? 

1つのゲームでユニークな剣を購入して,他のゲームで使用するというNFTの夢は,まさに夢でしかない

 Valveはすでに,自社でコントロールできる方法で,プレイヤーにゲーム内アイテムの取引を許可している(参考URL)。もしパブリッシャがゲーム間で使えるアイテムを欲しがったら,同じようにパブリッシャ同士が協力してクロスコンパチブルを実現できる。

 しかし,NFTは,あるゲームでユニークな剣を購入したら,ゲームメーカーが許可する必要もなく,それをサポートするために不合理な量の追加作業を行う必要もなく,それを他のゲームで使用できるようにするという夢を描いている。まさに夢でしかない。プレイヤーが所有するユニークなアイテムを新しいゲームに組み込むことは,視覚的にも機構的にも物流上の問題があるため,NFTがプロシージャル生成の種として使われる以上の複雑なクロスゲームの実用性は期待できない。

 また,NFTによって新たな所有者意識が生まれるかというと,それも幻想だ。NFTのベースとなっているEtheriumチェーンは,World of Warcraftのプレイヤーがお気に入りのキャラクタークラスの呪文がNerfされたことに失望したことに端を発していると言われているのだが(参考URL),NFT自体はそのような事態を防ぐことはできないのだ。NFTはデベロッパのサポートによってのみゲーム内に存在しており,デベロッパが,NFTがゲームの競技バランスを崩していると判断すれば,それに応じたNerfやBANが行われるのだ。

ゲーム業界は何年も前から,ゲームや体験をより集中的にコントロールする方向に向かっている

 プレイヤーが所有するユニークなアイテムをビジュアル的にもメカニズム的にも新しいゲームに組み込むことのロジカルな問題はさておき,ゲーム業界は何年にもわたってゲームや体験をより集中的にコントロールする傾向にある。違法コピーや改造が自由にできる「使い捨てゲーム」から,常時接続してカーネルレベルのアンチチートソフトウェアをインストールしなければ楽しめない(関連英文記事),厳重に管理された刹那的なライブサービスへと変化してきたのだ。

 では,誰が規制のリスクや既知の未知数を背負って,デフォルトでは取引からの利益を得られず,この種のゲームの推進者全員が,デベロッパやパブリッシャがゲームやプレイヤーの体験に対して期待するようになったコントロールレベルに哲学的に反対するような,新しいタイプのゲームを育成したいと思うだろうか?

 もしブロックチェーンゲームが登場するとしても,それがMicrosoft,ソニー,任天堂によってもたらされる可能性は非常に低いと思われる。近年,ゲーム機の壁に囲まれた状態が少しずつ緩和されてきているとはいえ,ゲームにおける分散型ブロックチェーン技術の主導権を握ることはないだろう。App StoreとGoogle Playも,Fortniteの収益の分配を求めて激しく争っていることを考えると(関連英文記事),スタート地点には立てないように思える。

 そうなると,ブロックチェーンゲームの足がかりとなるのはPCということになるのだが,過去10年のインディーズデベロッパが口を揃えて言うように,Steamを利用せずにPCで成功するのはかなり難しいと思われる。

 もちろん,Epic Games Storeはあるが。Valveのニュースが流れたあと,EpicのCEOであるTim Sweeney氏は,NFTベースのゲームのためにEpic Games Storeを提供することをすぐに提案した(関連英文記事)。これは,PCゲーム市場におけるValveの支配を打ち破るためには,差別化要素を構築する必要があること,また,AppleやGoogleに対する同社の異端児的なキャンペーンが,プラットフォームホルダーがプラットフォームを支配することの弊害に基づいていることが理由だろう。

現在,この分野全体が,詐欺,興味深い分散型技術の基盤,そして詐欺の難解な組み合わせで絡み合っているため,NFTには触れていません -Tim Sweeney氏,先月

 しかし,Sweeney氏でさえ,無条件の支持には至らなかった。EpicはNFTベースのゲーム自体を作っておらず,先月Sweeney氏はその理由について,「現在,この分野全体が,詐欺,興味深い分散型技術基盤,詐欺の難解な組み合わせで絡み合っているため,NFTには手を出していません」と説明している(参考URL)。

 また,Valveの禁止令を受けて,Sweeney氏は,他のデベロッパのNFTベースのゲームについても,「関連する法律を遵守し,規約を開示し,適切なグループによって年齢評価されたものであれば」許可すると明記している。

 通常,法律に違反していないことや規約を開示していることは言うまでもないが,前述の詐欺事件を考えると,多くのデベロッパにとっては大きなハードルになる可能性がある。また,世界の業界団体が実在価値の問題に神経を尖らせていることを考えると,彼らが設立したレーティング団体も,NFTを含むゲームのレーティングをより厳しく要求する傾向があるかもしれない。

 つまり,現在の状況を考えると,どの大手プラットフォームホルダーやパブリッシャが,法的規制の影響がほとんど明らかになっていないにもかかわらず,ブロックチェーンベースのゲームのアイデアを正当化し,それをヒットさせるための高品質な製品に投資しようとするだろうか。NFTがどのようにゲームをより楽しくするのか,人々が実際にプレイするゲームを探している店舗では許可されていないのに,ゲームはどのように顧客を見つけることになるのだろうか。

 UbisoftもAtari も,何年も前からブロックチェーンゲームのアイデアを持ち出しているが,どちらも何も導入していない。私は,彼らが今後もそうするだろうかと深く疑っている。

 これは,デベロッパが次のMinecraftを作るのではなく,ブロックチェーン技術に依存した次のMinecraftを作り,それをブロックチェーン以外の分野の大金持ちのパブリッシャが効果的にコピーして大衆に提供できないようにする,というような話だ。

 ブロックチェーンを支持する人たちは,この技術について,その存在自体がどこからともなく業界を破壊するような大物を自然に生み出すかのように語っていた。彼らはそれが正しいことを祈るしかないだろう。なぜなら,私が知る限りこの世で唯一のブロックチェーンの足場であったSteamで,Valveが禁止令を出したからだ。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら)


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